TBSの企業価値向上を目指して

TBSの反論

私共の提案に対してTBSは3つの主張を掲げられました。そのそれぞれについて以下の通り反論いたします。

1) サンクコストの誤謬

本提案に対するTBSの論旨は、経済学者が「サンクコストの誤謬(またはコンコルド効果)」と呼ぶ状態によるものです。貴社は、TBSが保有する東京エレクトロン株式は何年も前に極めて低額で取得したものであるから「価格変動によるリスクは事実上ありません」と述べています。

この議論では、「過去の投資費用(埋没費用=サンクコスト)は現在の投資判断とは無関係である」という、経済学部やビジネススクールで真っ先に学ぶような基本概念が無視されています。

経済学やビジネスの入門書では、以下のような例を使ってこの概念を解説しています。あなたはオペラコンサートのチケットを持っているとします。ところが、公演当日夜はひどい暴風雪で運転すら危険な状態です。果たして暴風雪の中を運転していくかどうかを判断する上で、チケットを自ら2万円払って購入したものか友人から無料でもらったものか、判断に影響するでしょうか。正解は「関係がない」です。いま目の前の危険な状態に立ち向かうか否かを決めるのに、もはや取り戻すことのできない過去に支払ったチケット代は関係ないのです。

貴社の理論は、東京エレクトロン株式はもともと低額で取得したのだから、その価値が暴落する可能性については心配すべきでない、と言っているように思われますが、これは基本的な経済理論に逆らうものです。東京エレクトロン株式のような資産を現時点で保有し続けるか処分すべきかは、過去の取得価格の多寡とは無関係に判断するものです。東京エレクトロン株式を取得する時にもっと高い値段を払っていたならば、現在その株式を保有する(または売却する)ことで株主が直面している「リスク」は異なるものになるとTBSは信じておられるのでしょうか。

この基礎的な投資の仕組みすら正確に理解できておられない状態で、TBS経営陣は同程度に基礎的な「資本効率」や「自己資本利益率」など他の概念を果たして十分に理解できているのか、株主が疑問に思ってしかるべきです。

2) TBSの大量の政策保有株式を正当化できていない

TBSによる東京エレクトロン株式の保有(全資産の19%、政策保有株式の35%に相当)は、より深刻な問題のごく一部にすぎません。全資産の72%を主力の放送事業とは無関係の有価証券、不動産および現金が占めているという問題です。この本業に関わらない金融資産の比率の高さはいかなる基準に照らしても異常です。TBSは、いわば副業として放送事業を行なっている4,500億円を運用する証券投資信託であると言えます。運用資金のうち3,000億円を、古くからの会社同士および個人の関係という以外に客観的な投資基準も持たず、わずか5社という小さな器に投資しています。プロの投資マネージャーがこれほど狭く無計画なポートフォリオを出したならば、必ずや職務怠慢で訴えられることでしょう。

東京エレクトロン株式だけに言及しているTBSの回答は、このより重大な問題を完全に避けています。TBSの回答によれば、2020年までに漠然とした具体性のないさまざまなプロジェクトに最大で500億円を投資する計画であるとし、私共が提案した東京エレクトロン株式の配当を行えばこれらの投資計画の障害になりかねないと暗に主張しているような印象を受けます。私共は、主力の放送事業を合理的に支える投資については全面的に支持することを強調しておきます。本提案に従って配当を行なった後も3,500億円以上の有価証券ポートフォリオを保有し続け、500億円の投資を十分に賄えることは述べられていません。さらに、このポートフォリオが受けるキャピタルゲイン課税を全額納付しても、TBSの過去20年分の資本支出を超える余剰資本が手元に残ります。東京エレクトロン株式を配当してもTBSの投資活動を妨げるものではなく、放送事業者としての重要な社会的役割を危うくするものでもありません。

日本でも、企業価値という観点から、もはや政策保有株式の存在を正当化することはできず、原則として削減するべきであることは広く認められています。この見解は現在のコーポレートガバナンスコードにも反映されておりますし、コードの改正案によって今後も強調され、経営陣が政策保有株式を削減しその理由を説明し正当化する責任はますます高まるでしょう。

TBSの経営陣は沈黙を続けることで、大量のバランスの悪い政策保有株式の問題に誠実に向き合う義務を避けていることに、株主は懸念するべきです。

3) 技術的な問題

本提案に対する最後の反論は技術的なものです。まず、東京エレクトロン株式の配当がキャピタルゲイン課税を受けるとのご指摘のとおりです。しかしながら、これは現在であろうが将来であろうが、株式を処分する際には当然発生します。配当がキャピタルゲイン課税の対象であるという事実があっても、それが配当を延期したり拒否したりする有効な根拠とはなりません。TBSの財務会計にキャピタルゲイン課税はすでに織り込み済みであり、したがって税金を支払ってもTBSの潜在的価値は変わりません。

また、現物配当は単純な現金配当よりも手続きが複雑であるという指摘も真っ当なものです。しかしながら、本提案は、希望すればすべての株主が配当を現金で受け取ることのできるオプションを与えています。また、専門家にも確認したところ、貴社が挙げた源泉徴収税と他のテクニカルな諸問題は、実務上、解決は可能である旨の回答を受け取りました。管理上の負担が大きいからと言って、東京エレクトロン株式配当を直接受け取る株主の権利を妨げる有効な理由にはなりません。TBS経営陣ならびに専門顧問をもってすれば、会社法及び適用される税法に基づいて現物配当を実行する能力があると信じております。